田嶋崇之です
今という時代が良い時代なのかどうか?
前回のハロー通信は年末年始で、ゆく年くる年のお話を書きましたが、春は年度替わりで別れと出会いの季節になります。今年は私の甥がいよいよ学校を卒業して社会人になる年になりました。20年ほど前はまだ言葉のおぼつかない赤ちゃんだったのが、今や社会に出て同年代の子たちと共にこれからは仕事相手になるかも知れないと思うと、自分の子供でもないですが時の流れの速さに驚くばかりです。
彼らの世代を想うと学生時代はコロナ禍で学生らしい生活もままならず、近年は円安もあり私の甥はまだ海外に出たことがないようです。私の学生時代を振り返ると1992年に大学に入学した時はすでにバブル景気のピークが過ぎて不動産価格や株価が下落し、明らかに景気が後退している事を実感させられました。大学2年か3年の頃に「就職氷河期」という言葉が生まれ4年のときには「超氷河期」と言っていました。それでも今にして思えばまだ日本社会は豊かさや熱気が残っていた気がします。私の通った学部ではヨーロッパ研修旅行があり学部の希望者100人くらいで夏休みに3週間くらいかけて、ほぼ観光旅行の研修が行われ、私もこれを目指してバイトを頑張って参加してきました。その後、私はサラリーマン生活から逃げるようにしてワーキングホリデービザを取得してオーストラリアへ逃れました。この時もまとまった預貯金が必要とされましたが普通のサラリーマンでもそれほど無理せず用意できるくらいの金額でした。何よりあの頃の日本は世界最強クラスの経済力を誇り円高の恩恵で海外へ出ればどこへ行っても何を買っても日本より安く感じられました。それが今では逆転して海外から来る観光客にとっては日本がとても安い国になり、オーバーツーリズムは問題でもインバウンド客を上手に取り込むことが今の日本にとっては重要な課題みたいになっています。こんな状況だから今の学生はバイトを頑張ってちょっと海外に行ってくるなんて難しくなり、ワーキングホリデーはホリデーと言うより出稼ぎみたいになっているそうです。私の甥には社会人生活はまだこれからですが慣れてきたらお金を貯めて休暇に海外へ行って見分を広げてもらいたいと思います。
それにしてもこの30年で日本は多くのものを失いました。日本の電機メーカーは世界での地位が低下して大手メーカーが買収されたり上場廃止になったりして白物家電やデジタル機器が日本製でなくても気にならなくなりました。最近は自動車メーカーも今の体制が維持できるのか心配で、この様な状況を見ると日本人としての誇りや自信まで失ってしまいそうです。まさか氷河期が30年も続いて「失われた30年」がまだ続いているとは思ってもいませんでした。しかし目を転じると世界では戦争や紛争が続き、どこどこにミサイルが撃ち込まれて何人死んだとか、軍事費が足りないからもっと出せとか、そんなニュースばかりで30年前と比べて世界の平和が脅かされているように思えます。そんな中で日本はまだ平和で、治安の良さは世界最高水準を維持しています。これが揺るがない平和や安全なのか考えると、そうではなくかろうじて保たれている平和や安全なのだと思います。これからあと30年くらいは生きる日本人として、揺るがない信念をもって守り、失ってはいけないものがあるのだと思います。