2020年12月号 社長ハロー通信より

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社長の田嶋崇之です

バベルの塔の話し

 

 年もあとわずか、いよいよ12月を迎え、ここから新年までは新幹線よりも早く過ぎ去っていきます。1年どころか10年前もついこの前のような気がしますが1日がもっとずっと長く感じていた子供の頃が懐かしくなってしまいます。で、今年を振り返ると新型コロナウイルスの話ししかなくて、ほぼ毎日トップニュースがこの話題でした。本当だったら今月のハロー通信は「今年はオリンピックで感動して・・・」なんて書いていたのがそうならなくて残念です。しかしおかげさまで身近に感染や発症の話はまだなく、営業的に昨年に比べきついと言っても旅行業界や飲食関係の壊滅的な打撃に比べればかなりマシな方だと思われるので「これで良し」としておこうと思います。ただ油断は禁物なのでまだ当面は、少なくともあと1年くらいは今のような生活が続くのかと思います。

 それにしても今回のコロナ禍、世界全体がリセットボタンを押されたというか生活様式から価値観まで大きな変容を強いられて大変な面もありますが、世界が新たなステージに移った、なんて大げさだけどそんな気がします。世界中でマスク着用が当たり前になるなんて1年前には考えられなかったし、正直今でも信じられません。欧米では今までキスやハグが当たり前だったのが、それをしたらゾンビみたいにウイルスが蔓延していくなんて、まるで映画の中の設定みたいで「これって実は夢を見ているだけなのか・・・」なんて思ってしまいます。ニュースを見ていてもキャスターやアナウンサーの間に透明なアクリル板が設置され今まで見たことのない異様な風景が新しい日常風景になっています。ただこれって、なんだかどこかで見たことがあるような気がして、それは何だか考えてみました。

携帯電話やスマートフォンが普及しメールやSNSなどコミュニケーションの手段が多様化し、今まで出会ったりつながったりする事がなかった人や社会が結ばれて新たな世界が広がる一方、隣り合ったり目の前にいる人同士でもメールやSNSで連絡を取り合ったりして「なんだ一体この風景は」なんて思い、違和感を感じた事があります。透明アクリル板越しの会話風景はその違和感が可視化されたようなものだと思います。そしてウィズコロナの今の状況は旧約聖書の「バベルの塔」そのものだと思います。バベルの塔は、人類が自分たちの力に慢心し、ある日突然お互いが通じ合えなくなるのですが、今の状況はまるで昔からの予言が実現されたかのようです。そしてこのような事態(単に病気が蔓延するという事だけでなく、人々が通じ合えなくなる事態)は昔からよくあって、だから聖書にも書かれて絵画に描かれて映画の題材にもなっているのだと思います。数年前に中世の画家ブリューゲルが描いた「バベルの塔」が日本にやってきました。また2006年のアメリカ映画で役所広司や菊地凛子が出演して話題になった「バベル」があります。それぞれ鑑賞して印象的でしたが、滑稽だったり、もどかしかったり、心に残る作品でした。で、まさかその数年後に人類がバベルの塔の住人になるなんて思いもしませんでしたが、それが偉大な予定調和なような気もします。今はそれぞれこの状況を受け入れて、自分なりに解釈して消化して乗り切っていくべきなのかと思います。