2019年4月号 社長ハロー通信より

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社長の田嶋崇之です

絵から見えてくる世の中のこと

 4月を迎え、肌寒さが残りながらも朝晩の日が延び晴れれば日中は暖かく、さくらや菜の花が咲く季節となりました。今月は平成最後の1ヶ月となります。おそらくこの1ヶ月はテレビやネットなどで平成を振り返る特集がたくさん組まれるのではないかと思います。

 私なりに平成を振り返ると、バブルの絶頂から始まって、それがはじけて失われた20年とか30年とか言われていますが、絶対的には日本が平和で経済的な発展も行き着くところまで行き、ほぼ全ての国民が衣食住に不自由しない、基本的に良い時代だったと言えるのではないかと思います。この間、日本は経済的にはそれほど発展せず、周辺の途上国がキャッチアップしてきたので相対的には低迷もしくは後退したように思えますが、今の途上国が日本の発展段階をなぞっている中で、日本は十分発展しきっているのだから、私たちは足るを知るべきかなと思います。


 話は転じて私はよく美術館へ行って絵を見ます。構図だったり色合いだったり筆のタッチなど、絵そのものに対する興味は尽きないのですが、私がより興味を持つのは描かれているテーマだったり描かれた経緯や時代背景などです。 先日訪れたのは東京丸の内にある三菱一号館美術館で、現在「ラファエル前派の軌跡展」が開催されています。これの何が面白かったかと言うと、産業革命が始まった19世紀イギリスにおいてルネサンス絵画の巨匠であるラファエロを中心に古典主義が芸術の規範とされていたのを、それ以前の芸術を範とした集団「ラファエル前派」が結成され、それが「アーツ・アンド・クラフツ運動」にもつながる、と言うものです。「アーツ・アンド・クラフツ運動」は産業革命の結果、大量生産による安価で粗悪な商品があふれた状況を批判し、中世の手仕事に回帰し生活と芸術を一致させる運動で、その後「アール・ヌーヴォー」や日本の「民藝運動」にもつながります。革命的な技術革新で世の中が大きく変わる時代状況が、IT革命の現代に通じる気がしますが、何か大きな変化が 起こり新たな潮流が生まれると、その変化に異議を唱えそれ以前へ回帰するという事を、私たち人類は今まで何度も繰り返していたのだと気付かされます。そもそも「ラファエル前派」が批判した「ルネサンス芸術」は古典古代文化の「復興」で、それぞれが過去への原点回帰に端を発し、まるでDNAの二重らせん構造のようにも思えます。


 「時代は繰り返す」と言う事を、絵を見る事で気付かされますが、それを今の時代に置き換えるとどうなるか、考えて見ました。

よく言われることですが今発展中の途上国も、やがて成熟してバブルになって崩壊するのではないか、と言うのがあります。また現在、日本で問題になっている「少子・高齢化」が中国などでも始まっているのではないか、とも言われます。日本はバブルが崩壊して少子・高齢化が進んでも「超大国」ではないので世界にそれほど大きな影響を与えてはいないですが、中国やインドのような規模の国々が今後ますます発展して、やがてバブルが崩壊して少子・高齢化も進んだら世界中に大きな影響を与えそうに思えます。こう書くとなんだかお先真っ暗みたいに思えますが、世界の文明が成熟すると思えばマシなようにも思えます。今よりマシな世の中にするには・・・今度の選挙でマシな人を選ぶことかな、なんて考えてしまいますが、まずは足るを知って、満ち足りたこの世の中と今の世を作り上げた先人に感謝して、この国とこの世界が変な方向に行かないように、しっかり自分の頭で考えて行動することだと、時代の変わり目に思った次第です。